三菱UFJフィナンシャル・グループの平野信行社長は6日午後、東京・大手町で開いた「金融ニッポン」のトップ・シンポジウム「成長への次の一手」(主催・日本経済新聞社)で講演した。11月に豪ブリスベーンで開くG20(20カ国・地域)首脳会議などで議論されるとみられるGLAC(金融機関の破綻時の損失吸収能力)と銀行勘定の金利リスクの見直しについて「規制の内容次第では内外経済へのネガティブな影響は大きい」と述べた。貸出金利の上昇や貸出抑制を通じて、投資や個人消費が落ち込む可能性があるとの認識を表明。「官民の総力を挙げて交渉していく」と述べた。平野氏は現在、全国銀行協会の会長を務めている。
三菱UFJの国内戦略については、個人顧客と生涯にわたる関係を構築することの重要性を強調。資産形成の支援や運用、承継ニーズの取り込みを図る姿勢を示した。法人分野では、中小企業の資金需要の回復はまだ力強さに欠けるとしたうえで、「産業基盤の中核を担う中小企業の底上げも、金融機関としての重要な使命の1つ」と説明。現在行っている資金需要を喚起する具体策として、電子記録債権などを活用した新しい資金調達スキームを紹介した。
日本経済に関しては財政再建の重要性を指摘し、2015年10月予定の消費税率の再引き上げについて「先延ばしにすべきではない」と表明した。併せて「景気対策と社会保障改革の確実な実行が必要不可欠だ」とも語った。
円相場を巡っては「急激な為替変動は弊害も多い。特に急ピッチでの円安に伴う輸入物価の上昇が家計や中小企業に与える影響には注意が必要」との見解を示した。輸出に関して「数量の伸び悩みは想定外」と言及したうえで、為替変動が輸出数量に影響を与える時間が長くなっていることや、輸出価格の低下ペースが過去の円安局面に比べ緩やかになっていることを指摘した。「時間の経過とともに徐々に顕在化してくる」とも述べ、今後の輸出回復に期待を寄せた。〔日経QUICKニュース(NQN)〕
2014/10/6 日経新聞より